「ブクブクタンク」という商品をご存知だろうか。
活魚運搬用のエアポンプ付きポリタンクである。
類似した製品は他にもあり、もともとは、どれもオトリ鮎なんかを入れることを想定していたようだ。
そのため、最低限の機能でありながら、一昼夜の釣行であれば、十分に魚を生かしておくことができる。
また、サイズも10〜15L程度とコンパクトで、簡単に持ち運ぶことができる。
評判は、趣味で魚や水生昆虫を採取する人たちの間でも広がり、昨今はホームセンターなどでもよく見かけるようになった。
ぼくがこの種のタンクを手に入れたのは、今から30年ほど前、小学生のときだった。
普段は小魚を生かすために使っていたのだが、
冬のある日、
友人Iと共に、釣ったニジマス数匹をタンクに入れ、持ち帰り、学校の池に放した。
(ちなみに、その後、草魚を放したこともある。)
もちろん、夜、誰にも見つからないように。
小学校の池には大小かなりの数の鯉が飼われていたのだが、
ぼくとIはエサの隠し場所を知っていて、
時々くすねては、さり気なく、池に撒いていた。
その池に数匹のニジマスが加わったのである。
これが興奮せずにいられようか。
さすがは、もともと養殖のニジマス。
エサの食べ方が尋常じゃないほど激しかった。
ゆ〜っくりパクパクしている鯉の横で、
「バシュッ!バシュッ!」と飛沫をあげながら、狙いすましたように、
疾風の如くエサを喰らう。
もう、おもしろくて、おもしろくて、たまらなかった。
しかし、所詮は小学生。
2週間もすると飽きて、間もなく、その存在すらすっかりと忘れてしまった。
それから数ヶ月が経った5月のある日。
朝、登校すると、池の周りに数人の先生と用務員のおじさんが集まって、何やら話をしている。
足もとには、半なまのニジマス…。
「あっ…忘れてた…」
水温の上昇に耐えきれなくなり、池から飛び出したのだろう。
池の中にはまだまだニジマスがいる。
それから、ぼくらは敢えて池に近づかないようにしたのだが、
数日のうちに、ニジマスは全滅することとなる。
ほぼ毎日、池に“謎のニジマス”が浮くのだから、これまたおもしろくて仕方がなかった。
(↑悪いな…ぼく。)
でも、一番おもしろかったのは、
生活指導の先生が集会で、
「スーパーで買った魚を池に捨てないでください」
と話したこと。
心の中で大爆笑。
(↑これまた悪いな…ぼく。)
ただ、それ以来、ぼくはニジマスを一切食べられなくなった。
多分、“ニジマスの呪い”だろう。
釣れ釣れ度■■■■□
ロスト度■■□□□
レア度■■■□□
「全員目を閉じましょう。先生は怒りません。やった人は正直に手を挙げてください。」度□□□□□