まだぼくがブラックバスに出会う前の話。
父親と、とある釣り堀で金魚を狙っていた。
しかし釣れない。
けっこうな混み具合なのに誰一人として釣れない。
そんな中ついに魚信が。
格闘すること2秒。
釣れたのは「ヌマチチブ」であった。
それでも、当時のぼくにとっては、「ヌマチチブ」はサイズ以上の大物であり、それはそれは嬉しかった。
ぼくは「ヌマチチブ」を大層大事に扱って、バケツに入れた。
その日は本当に釣れない日であったようで、周囲の大人たちは、早々に道具を片付け、釣り座を発った。
ここで事件が起こる。
大人たちは帰り際にぼくのバケツをのぞき込むと(ここまでは釣り人の性である)、次々に、
「これはザコだ」
「アハハハッ(笑)」
「これはいちばん釣っちゃダメなやつだ」
などと口にしたのである。
このときのぼくは、
なんだか、悔しいやら、恥ずかしいやらで、
多分、ヘラヘラしていたことだろう。
今ぼくの周りにも、
マグロ信奉者やアマダイスト、
ヤマメ崇拝者にタナゴヲタ、
バス釣り愛好家、片やバス釣りを馬鹿にする者やバスを目の敵にする者、
などいろいろなタイプの釣り人がいる。
そして彼らは、大概、程度の差こそあれ“どうしようもない人間”であり、殊釣りにおいては排他的思考の持ち主なのだ。
誤解のないようここに強調するが、趣味なので、それはそれでいい。
しかし、幼い頃に上記の体験をしたぼくは、あえて、堅固でありながらも低い垣根を築くよう心掛けている。
どんな釣りも、どんな魚も、好きだ。
少なくとも、「ヌマチチブ」を釣る少年のことを笑ったりはしない。
…「ヌマチチブ」にそっくりなナチュラルプリントのルアーを眺めながら、そんなことを思う。
1980年代中頃のコットンコーデル『ビッグO』。
ウエイト/8.3g(実測値)
C77かな。
これも、アムコ「173-U」の中のルアー。
まぁ、ぼくも、“どうしようもない人間”の一人である。
釣れ釣れ度■■□□□
ロスト度■■□□□
レア度■■■■■
「天は魚の上に魚を造らず魚の下に魚を造らず」度■■■■■