「海神」Daiwa/SEA SNAKE

学生時代、

知り合いの船に乗せてもらい、

時々ボートシーバスを楽しんでいた。

 

 

ある日の釣行で、

同船していた(知らない)おじさんが、

突然、便意を催したことがあった。

 

 

どうやらそれは、

我慢できないレベルの、

猛烈なものらしい。

 

 

ぼくだったら、“とも”からお尻だけ出して

「ぶりぶりっ」と脱糞しちゃう。

 

まぁ、一応、みんなには

「見ないでね」

と声を掛けて。。

 

 

しかし、そのおじさんは、どうやら慣れていないようで、、

(そもそも釣りの動作も怪しかった)

近くの岸壁から陸に上がり、脱糞することとなった。

 

 

おじさんを降ろした後、気をつかった船長は、岸壁からかなりの距離、船を離した。

 

 

夜の工業地帯。

 

 

フェンスの横でしゃがむおじさんのシルエットが、鮮やかに浮かび上がる。

 

 

間もなく、脱糞の瞬間(とき)を迎えるのだろう。

 

 

感動的な光景が

 

とにかく、間に合ってよかった。

 

 

ぼくは、おじさんがなんだか不憫に思えてきて、

それに、そんな趣味もないし、

すぐに視線を逸らした…

 

 

次の瞬間、

 

 

同船していた友人が、

「あっ…!」

と、驚きとも悲鳴ともとれない声を上げた。

 

 

なんと、脱糞中のおじさんが、

暗闇の中、

煌々と輝いているではないか。

 

 

運悪く、巡回中の警備員に強力な懐中電灯で照らされてしまったのだ。

 

 

あまりにも神々しいので、一瞬、「海の最高神」かと思ったほどである。

 

(もちろん、「うんちんぐスタイル」ではあった)

 

 

当然、これは、後々笑い話となるわけだが、

この瞬間は、衝撃のあまり、誰も言葉を発することができなかった。

 

 

不思議なほどの静寂が船上を支配する中、

ただただ、

脱糞中のおじさんが懐中電灯で照らされ続けていた。

 

 

気を利かせて、船を岸壁から遠く離したのもまずかった。

 

 

懐中電灯に照らされながら慌ててお尻を拭くおじさんのもとに、

なかなか近づくことができない。

 

 

拭きもそこそこに警備員と何やら揉めている。

 

 

やっとのことで着岸すると、みんなで警備員に平謝り。

 

 

ぼくは、船から飛び降り、

ほっかほっかの人糞に砂をかける、というパフォーマンスを披露。

 

 

かなり迷惑そうにしていた警備員も、

「まぁ、仕方ないな…」

といった様子で、その場を見逃してくれた。

 

 

その後の釣りの時間は、、

つらいものとなった。。

 

 

みんな無言。

 

 

知らないおじさんだったから、ぼくも、不用意に絡んでいけない。

 

 

つっこんであげた方がおじさんも楽なんじゃないか…とだいぶ悩んだ。

 

 

何より、笑いを堪えるのに全身全霊を注いでいたものだから、釣りどころではない。

 

 

死ぬほど苦しかった。

 

(絶対、みんなそうだったに違いない)

 

 

 

そんな「海神」が送り込んできた海蛇、

ダイワ『シースネーク』。

 

 

1980年代初頭〜中頃のルアー。

 

 

そうなのだ。

 

 

あの時、知らないおじさんが投げていたのが、まさにこの『シースネーク』だったのである。

 

 

とてつもなく飛んでいなかったし、全く釣れていなかった。

 

 

当たり前だ。

 

 

もちろん、いろいろと投げていたルアーの中の一つなのだが、、

 

つい20年前の話である。

 

 

雰囲気を楽しんでいただけなのかもしれないけれど、

時代錯誤も甚だしい

 

 

なんだか、

ちょっとムカつく。笑

 

 

しかし、この時、すでに、

おじさんは猛烈な便意と戦っていたはずだ。

 

 

朦朧とする意識の中で、

よく分からず投げてしまっていたのかもしれない。。

 

 

 

ちなみに、おじさんが投げていたのは、多分、大きい9cmの方。

 

 

これは、7cm。

 

ぼくがバス釣りを始めた頃にもらったものだ。

 

 

 

やはり、海(シーバス)用なのだろうか。

 

 

まんま、ニールズマスターの『インビンシブル』である。

 

 

意外とちゃんと泳ぐ。

 

 

釣ったこともある。

 

 

でも、現代において投げる価値は、ない。

 

 

 

とは言え、このカラー…

 

 

現代のルアーにはない、圧倒的な美しさだ。

 

 

 

釣れ釣れ度■□□□□

ロスト度■■□□□

レア度■■□□□

「ポセイドン」度■■■■□

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