「対話」HEDDON/THROBBER

「釣りは自然との対話」

だとか、

「魚との対話」

だとか、、

そんなフレーズをよく見聞きする。

 

 

その度にぼくは、

「は!? あなた魚と喋れるんですか??」

と、ちょっとだけキレるのだが…

 

 

ブログを読み返してみると、

ぼくにもそんな節があるので、

これからは怒らないことにしよう。

 

 

ただ、ぼくの場合、魚よりも釣り道具と対話することの方が多いようだ。

 

 

そして、

対話することが物理的にも精神的にも困難を極める“はっきり言って苦手なタイプ”

というものが存在する。

 

 

人間はもちろんのこと、釣り道具においても。

 

 

例えば、そう、、

これも苦手なタイプのルアーである。

 

 

ホッパーストッパー『スローバー』

 

…の、ヘドン(プラドコ)復刻物。

 

 

カラーもいい。

 

表情もいい。

 

匂いはあまりしないが、質感はなかなか。

 

 

「よしっ、いこう」

と声を掛け、期待して水面に送り出す。

 

 

『スローバー』も小さく、

でも確かに、

「ういっ」

と応える(応えているような気もちになる)。

 

 

自信があるのだろう。

 

余裕の表情だ。

 

 

 

このルアーの特徴は内部構造にある。

 

 

先っちょに鉛の付いた長めのスプリングが、わずかな刺激にも反応し、揺らぐ。

 

(この仕組みは一般的にスプリングラトルと呼ばれるのだが、ラトルとしての機能はほぼない)

 

それによって『スローバー』は、しばらくの間、水面で微かに身震いをする…というわけだ。

 

 

ところが、、である。

 

 

キャストしてしまうと、目視できないので、身震いしているのかどうかが分からないのである。

 

 

『スローバー』に

「震えてますかー?」

とたずねても、うんともすんとも言わない。

 

 

こちらからの呼び掛けに完無視である。

 

 

しかし、焦りは禁物だ。

 

 

あくまでスマートに操っている素振りを見せなければ、

『スローバー』からも、周囲のアングラーからも、

「こいつ、初心者だな…」

と思われてしまう。

 

 

ここはひとつ、

『スローバー』を信じ、

『スローバー』の意思を感じ

堂々としていよう。

 

 

きっと、彼方の水面で、

震えながら、バスを誘っているに違いない。

 

 

…いや、待て。

 

 

『スローバー』のあの表情…

 

あれは自信の表れなんかではない。

 

 

完全にこちらをなめきっている表情だ。

 

 

このまま放っておいたら、

「こいつ、今、オレが震えてると思ってんだな…笑」

と、じーっとして休んでいる『スローバー』にバカにされかねない。

 

 

巻き取ったら巻き取ったで、

「えっ? なになに?? オレ今、震えてたんですけど」

と言われそうだ。

 

 

そう、ぼくには逃げ道がないのである。

 

 

いずれにせよ、「下手くそ」と思われるのがオチだ。

 

 


 

先日、釣り雑誌で偶然『スローバー』を見つけた。

 

 

筆者はよく分かっている人物のようで、

そこには、

オートマチックルアーとして紹介されていた。

 

 

『スローバー』は人間の所存など知ったこっちゃない

ということか…。

 

 

なんとも苦手なタイプのルアーである。

 

 

いいルアーとは、得てして、アングラーの意図した通りに動き、かつ状況、状態、をアングラーに明確に知らせてくれるものである。

 

 

 

釣れ釣れ度■□□□□

ロスト度■□□□□

レア度■■■□□

「交渉決裂」度■■■■□

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