P.T.FACTORY/Flicker Mash

ぼくのじいちゃんは、生前、「こけし」を集めていた。

 

 

そんなじいちゃんが、30数年前、ぼくに語ったことが忘れられない。

 

 

「作った人が死ぬと価値が上がるんだよ(ニヤリッ)」

 

 

じいちゃん…

 

 

幼い子どもに、なに教えてんだよ…

 

 

もう、死ぬまで、ぼくの頭から離れないだろう。

 

 

 

これが今回のルアー『フリッカーマッシュ』につながる。

 

 

ビルダーは、10代の頃からリアル系のルアーを製作していた高井正洋氏。

 

 

形こそ至ってシンプルだが、

丁寧に、誠実に、作られている。

 

 

 

しかし、これ、動かない。

 

 

数あるルアーの中でも、特に動かない部類に入る。

 

 

ひょっとすると、

「プライムタイムファクトリー」は、

イレギュラーなアクションをアングラーに求めているのかもしれない。

 

 

否、そうであるとしても、、

 

難しすぎる。

 

 

これほど動かすことが困難なルアーは他にない。

 

 

学生時代、

とある釣具店で「プライムタイムファクトリー」のルアーを手にとって眺めていると、

見知らぬ男性が、

「これ、全然動かないよ」

と話し掛けてきた。

 

 

また別の店では、店主に、

「これは、、買わなくてもいいよ」

とまで言われた。

 

 

まぁ、それでも、ぼくは“何かが気になって”購入したのだが…。

 

 

その後は、

 

あまりの動かなさに衝撃を受け、

 

意地でも“使えるようになろう”と思った。

 

 

見た目は格好いいので、かなり使い込んだ。

 

 

でも、ほとんど釣れなかった。

 

 

そして、いつまで経っても、納得のいくアクションは出せなかった。

 

 

 

世間の評価も、そんなものだったのだろう。

 

 

“インディーズブランドのトップウォータープラグ”ブーム真っ只中、

 

店頭では長い間売れ残っていたし、

 

ネットや中古ショップでは、

プラ製のルアーと変わらない値段で取引されていた。

 

 

ところがである。

 

 

2011年、ビルダーの高井正洋氏が急逝。

 

 

その途端、

 

市場から「プライムタイムファクトリー」のルアーが消え、

 

取引価格は定価の倍以上に高騰した。

 

 

 

ルアーの評価も、

 

(やっぱり動かないようなのだけれど)

 

玄人向けだの、

 

ビルダーのこだわりだの、

 

手のひらを返したように“うなぎのぼり”。

 

 

 

なんだよ、それ…。

 

 

 

合掌

 

 

ぼくは、死してこの世に何を残すことができるのだろうか。

 

 

 

釣れ釣れ度■□□□□

ロスト度■□□□□

レア度■■■□□

「ゴッホも生前に売れた絵は『赤い葡萄畑』の1枚のみだった」度■□□□□

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