小学生のとき、近所の池で、同学年くらいの釣り人に出会った。
ぼくはいつも同じポイントで釣りをしていたのだが、必ず彼も、その対岸に陣取っていた。
狭い池でお互いが相対する形で釣りをするものだから、するまいと思っても意識してしまう。
彼の釣りは、侍の如き芯の強さと、優雅さを兼ね備えていた。
葦際に鋭くキャストを決め、
ふわりふわりと刀 ロッドをあおる。
ストラクチャーを形成する廃タイヤや冷蔵庫に“わざと”ラインを絡めては、
ふわりふわりと刀 ロッドをあおる。
これを暗くなるまでひたすらに繰り返し、何事もなかったかのように去っていく。
親しくなりたかったものの、ただものではない雰囲気に圧倒され、彼に声をかけることはついにできなかった。
そのうちに、電車でメジャーな釣り場に通うようになったり、部活動も忙しくなったりと、ぼくがその池に行くことはなくなってしまった。
(間もなくして池も埋め立てられてしまった)
ところが数年の後、二人は奇跡の再会を果たす。
高校の同級生として。
これが、ぼくがイチロックという生涯の友をもつきっかけである。
ぼくらは、今まで、ずっとバス釣りを続けてきた。
バス釣りを続けることで、感動を重ねてきた。
お互い、
釣りのスタイル、釣りを楽しむ気もち、考え方の根底にあるもの、
は初めて出会ったときからなんら変わっていない。
ルアーフィッシングにおいて共通しているのは、“これで”釣りたいという強い思い。
“これで”釣りたいから、ぼくらはいつも試行錯誤してきた。
そうして、多くの場合、“これで”釣ってきた。
その過程でイチロックから学んだことは数知れない。
例えば、「ラインでルアーを動かす」ということ。
要は、コツみたいなものである。
今でこそちょいちょいメディアで見聞するけれど、
30数年前は、「ラインでルアーを動かす」なんて概念は、多分どこにも、全く、述べられていなかった。
イチロックは小学生のときから、知らず知らずのうちに—ただ釣りたい一心で—それを実践していたのである。
これが今回のルアーの話につながる。
’90年代の中頃に発売された、
メガバス『ライブX スモルト』。
しばらくの間、なんて扱い難い—釣れそうで釣れない—ルアーだと思っていた。
そんなだったから、後に、一見似たようなタイプのルアー「ベビーシャッド」の釣れ具合を体感したときには、
「歴史が変わったんじゃないか」
と思うほどの衝撃を受けた。
『ライブX スモルト』と比べると、「ベビーシャッド」は、お子様向けというか、なにより分かりやすかった。
ロッドで大雑把にアクションさせても大丈夫だし(むしろそのほうがいい)、水中での様子も手にとるよう…
話を戻そう。
『ライブX スモルト』の話であった…。
ところが、ライン(糸フケ)でアクションさせてみると、『ライブX スモルト』は化けた。
ウエイト/3.3g
ボディ長/48mm
生物ライクなアクションは「ベビーシャッド」を凌ぐ。
なおかつ、それをコントロール下における。
そんなこんなで、自身の未熟さに気づかされるとともに、ものすごく見直したルアーの一つである。
春先にハッスルするタイプのルアーだが、
あっっっついときと、さっっっむいとき以外は、間間釣れる。
水中の何かに横からごりごりすれば、ほぼ釣れる。
険しい表情でじーっとしているバスには、すこぶる強い。
まっ、トータルで考えると、「ベビーシャッド」の精度や安定感、釣果、には到底敵わないのだけれど。。
(効果には個人差があります)
ごく短い移動距離で派手に暴れる姿は、人間から見たら生きているようでも、魚から見たら嘘くさいのかもしれない。
※長らく現行品であったが、現在は廃番のよう。内部構造に新技術を取り入れるためにマイナーチェンジを繰り返し、一つのルアーを残していく。従来の釣具メーカーとメガバスが異なる点であり、ぼくはメガバスのそういうところが好きなのだ。
いずれにせよ、“ぼくが”ルアー本来のパフォーマンスを引き出せていないってこと、またそういうルアーって、けっこうあるんだろうなぁ。
釣れ釣れ度■■■□□
ロスト度■■□□□
レア度■■■□□
「イチローを使わなかった土井監督」度■□□□□