HEDDON/BABY TORPEDO ②

ルアーには、臭くなるものと、臭くならないものがある。

 

 

そして、臭くなるものは、

緩やかな曲線を描くようにして、

長い年月をかけ、少しずつ、少しずつ、刺激的なアロマを深めていくのだ。

 

 

ところがである。

 

 

中には、ある日突然臭くなるという、とんでもないやつがいる。

 

 

それが、この、ヘドン『ベビートーピード』だ。

 

 

『ベビートーピード』が好きなのは、以前、述べたとおり。

 

いつでも、どこでも、外せないルアーなのである。

 

 

その日の釣行にも、もちろん、持ち込んでいた。

 

 

事件は、帰りの車中に起きた。

 

 

突如として、車内にワキガ臭が充満したのである。

 

 

しかし、いくら親しい間柄であっても、「ワキガ」は、なかなかデリケートな話題だ。

 

 

普通の異臭であれば、誰かが「うおっ! クサッ!」などと言っておしまいだろう。

 

 

ところが、どこからどう嗅いでも正真正銘のワキガ臭であるため、誰もそのことに触れようとはしない。

 

 

…それにしても強烈だ。

 

 

ぼくは後部座席に座っていたのだが、

間もなくして、助手席にいた先輩が、高速走行中であるにも関わらず、少し窓を開けた。

 

 

みんながみんな、

互いに気をつかい合いながら、

ぎりぎりのところで、ワキガ臭に耐えていたのである。

 

 

実は、このときぼくは、

「ニオイのもとはぼくなんじゃないか…」

と、かなり焦っていた。

 

 

ぼくは体臭がほとんどないタイプなのだけれど、

それこそ、

「突然、ワキガになった!?」

と、悩み始めていた。

 

 

(後で分かったことだが、このときは、みんなが「ニオイのもとは自分なんじゃないか」と思い、それぞれに焦っていたのであった・笑)

 

 

結論として、これは笑い話ですむこととなる。

 

 

なんとか持ちこたえて地元に戻り、バックドアを開けると、荷室が圧倒的に臭い。

 

 

そこからさらに爆心地を探っていくと、、

ワキガ臭の主は、

ぼくのリュックのサイドポケット、ラインを切った後、フックカバーだけを付けて無造作に押し込んだ『ベビートーピード』であった。

 

 

「あのとき、なぜ突然臭い出したのか?」

については未だ不明である。

 

 

気温や荷室内の温度、湿度、釣り場の水質…など、

様々な要因が重なり合い、偶然引き起こされた、

まさに“奇跡のハーモニー”だったのだろう。

 

 

何年か振りに取り出してみると、

刺激臭は、濃く、まろやかなものになり、

腐食がだいぶ進んでいた。

 

 

 

釣れ釣れ度■■■■■

ロスト度■□□□□

レア度■■□□□

「要は熟成のさせ方」度■■□□□

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